|
カナダやアメリカの先住民が作ったトーテムポールには鳥の顔が彫られているものがありますが、朝鮮半島南部にも自然樹の細長い竿の先端に木製の鳥が止まる鳥竿、ソッテ(チャンスン)という長柱があります。この鳥に鴨の形が多いのは地・水・空を自由に行き来することが出来るからといわれています。中国大陸南部の苗(ミャオ)族の村の中心に建てられた柱にはてっぺんに木製の鳥が止まっています。天に向かいそびえるもの、すなわち神を呼ぶもの。そして鳥はその神を運ぶ神使であるとされていたのです。古代エジプトのアメン神と呼ばれる神は長い2枚の鳥の羽をつけた冠をかぶっているのが特徴です。また天空の王であるハヤブサを司ったホルス神は天空神であると同時に王家の守護神でもあったといわれ、その両眼は月と太陽を表し、全てを見るもの、完全なもの、という意味があるそうです。余談ですが、エジプト航空のマークはこのホルス神をデザイン化したもので、その機内誌のタイトルは「HORUS」です。時代を超えてこれからも人々を見守り続けるホルスを幸せを運ぶマークとして使用しているのでしょう。古代日本には、「飛鳥(アスカ)」また「斑鳩(イカルガ)」といった鳥が付く地名が多いのも鳥が何かを運ぶからなのでしょうか。鳥の字から来る鳥居という門の形式は中国・江南が発祥とされ日本に伝承されたといわれています。日本の弥生時代の村の入り口には鳥居の元になる領域を標示する鳥付き門があるのを見つけることが出来ます。それは悪霊を防ぐ結界門といわれるものが鳥居の起源とされていて、左右2本の柱の間に木を横に渡したものや、しめ縄を渡したものの上で羽を休める鳥の宿り木となっていたからです。朝鮮半島でソッテ(チャンスン)のある場所は元々は人々が嬉しい時や悲しい時に天に向かって祈る場所でした。また、南部の村では守り神としての柱や祭りの際の鬼払いとして男女2本の非対称で対になっている柱が確認されています。上の2枚の写真を見ていただくと、左側の高い木に止まっている鳥がりりしいオスに右側の低い木に止まっている鳥がやさしいメスに見えてくるから不思議です。ホテルの宴会場はおめでたいご披露宴のご利用が多いように思われますが会議や展示会の他に、近年では悲しみ事のお別れ会(偲ぶ会)やご法事のご利用も多いのです。その様な人々の日々の行いの全てが見られる場所に安らぎの空間である中庭を造り、そこにバードランドとネーミングされた鳥のオブジェを設置したアートディレクターのヘレン・グリンのセンスには素晴らしいものがあります。また、非対称から思い起こされるものとして生け花があります。華道にはそれぞれの流派に宇宙観があり天・地・人、真・副・体など自然界からの表現での技法が施されます。ホテルを大きな花器と見立てると、エントランスから中央を貫く通路を真(しん)にして、左側の高いオブジェが副(そえ)になり、右側の低いオブジェは体(たい)になっているのです。この配置の見事さにも驚かされますが、これは単なる偶然なのかもしれません。ここのところは是非、ヘレン・グリンに聞いてみたいものです。グウエン・ミュラルもアーティストとして、歴史をひも解き世界の文化を研究し感性を磨きながら物作りをしているのでしょう。ホテル日航東京の中庭のイメージコンセプトに自身の作品が選ばれたことの役割は非常に大きいと感じます。 |